ワイン備忘録 2014/10/03

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産地 :アブルッツォ(Abruzzo)

品種 :モンテプルチアーノ(Montepulciano)

生産者:ファルネーゼ (Farnese)

醸造年:2012年

価格 :2,000円弱

購入元:東屋酒店

 

多くの店で、探さなくても勝手に視界に飛び込んでくるファルネーゼ(Farnese)というブランド、数多くのラインナップがある中で特に説明が印象深かったワインなので購入した。

 

まず、イタリア・ワインの愛好家に言ったら怒られるだろうが、このワインのプロフィールを調べるのに非常に困惑した。モンテプルチアーノが産地なのか(モンテは山の意だと思うので、これもおかしくはない)、アブルッツォが産地なのか、はたまたモンテプルチアーノ・ダブルッツォという産地なのか・・。

 

これは単純に私の知識が無いのが悪いのだが、日本のワイン・ガイドブックはフランスに半分以上のページを割いており、その他の地域(イタリアだとかドイツ、スペインだとか)には非常に少ない情報しか与えられていない。ニューワールドのワインがこのような扱いを受けるなら分かるが、せめてイタリアくらいはもう少し(今の5倍くらい?)は多くのページを割いても良いのではないか。日本のワインショップに足を運んで、多く目に入るのはフランスとイタリアのワインなのだから、当然イタリア・ワインにも然るべき敬意が払われるべきだ。

 

はてさて、このアブルッツォという地域はアペニン山脈(!)の東側、アドリア海に面したエリアだという。特に私は地理が全くダメで、今から勉強しようという最中なので、アルプスピレネーの影に隠れて意識すらしなかったアペニン山脈という言葉をワインを通じて覚えられるのは非常に有難い。まだ勉強中で詳しく無いので、余りいい加減な知識を披露するのは気が引けるが、地質学という学問分野の中で"造山帯"とか"造山運動"という言葉をしばしば耳にする。アペニン山脈というのは、アルプスの造山運動のプロセスの中で、アフリカ大陸プレートと、ユーラシア大陸プレートが衝突した結果として出来たものだという。アルプスに対するアペニンというのは、いわばヒマラヤに対するインドネシアに相当するのだろうか?知識の不足を呪いながらも、こう多分野の関連付け・ネットワークが脳内で出来上がっていくのは感慨深い。

 

前置きはさておき、このワインは特別に造られたものらしい。(他の多くのレビューでも強調されている点なので、私があえて強調する必要もないが)通常8房成る木の収量を2房まで抑えて、味を凝縮したというプロフィールが書かれている。尚、このような「生産者はこれだけ頑張ってるんだ・・!」的なアピールは、このワインに限ったものではなく、チリやアルゼンチン等のワインでも随所で見られるものだ。ブドウのような複雑な生物の場合には、8房を2房に抑えたら味が4倍濃くなる、という小学生の算術が通用するのかは分からないが、一つのアピールポイントになることには違いない。

 

しかし、唯のアピールポイントに終わっているわけではない。事実、このワインは非常に色合い・味わいが濃く、(元の4倍かは知らないが)相当な凝縮度を備えたワインである事は疑いようもない事実だ。グラスの向こうが透けない程の濃い赤紫で、ベリー系の甘い・フルーティーな香りが充満している。味わいは、酸味が無いわけではないが、甘味が結構勝っている。

 

凄く濃い、美味しい、満足感がある、それでいて、「一回飲めばいいかな?」と思ってしまうのは何故だろうか?他の人のレビューとかは抜きにして、私個人として思うのは、「酸の不足」が原因だと思う。濃厚な赤ワインなのに、(デザートワインほどではないにせよ)全体的な印象として甘いと言うのは大きな痛手だ。この濃厚さで、何とか甘味をごまかしている感じがするが、これなら前回酷評したピノ・ノワールのほうが良いとも思える。甘いのは良いけど、甘すぎは良くない。(特にデザートワインとして飲む、という当初からの目的が無い限りにおいては)

 

少し前に、ボルドーの蔵出し長熟ワインを飲んだが、こちらと比べると本当に濃い・甘いだけで余り奥行きが無いように感じた。余りフェアな議論じゃないのが、あちらは10年以上熟成されたものに対して、こちらは2012年の若いワインだという事だ。収量を抑えて売るので早く現金化したい気持ちは分かるが、もう少し寝かせてから売ったらどうなのか?(そうすると高くなるんだろうが・・)

 

【追記】

元々の甘味が強いため、冷たい温度(通常、赤ワインでは飲まない温度)で飲むと丁度良く感じた。また、超フルボディのため、ステーキとは好相性だった。